この景色を、
どうしても形に残したかった
フィリピンの海に潜った時のことは、今でも忘れられないですね。水中で「ニシキテグリ」っていう、宝石のように鮮やかな魚を追いかけていたんです。あまりに綺麗で見惚れてしまって……。その時はスキンダイビングだったので息を止めている時間が長すぎて意識が朦朧としていた。ブラックアウト、つまり気絶寸前ですよ。
慌てて浮上して、海面で息を整えながら思ったんです。「この景色を、何とかしてそのまま形に残したい」って。でも、当時持っていた簡易的なカメラで撮ってみても、現像してみると全然違う。自分が見たあの青が、どこにも写っていないんです。それがたまらなく悔しくてね。仲間から一眼レフを無理やり借りて、本屋で写真の本を買い漁って、独学で始めました。当時は時計の販売員をしていて、稼いだお金は全部海につぎ込んでいましたね。国内でもダイビングは一日3〜4本潜ると3〜4万円くらい飛んでいく。普通の給料じゃ全然足りないなと笑いながら、でもその「持ち帰れない」悔しさが、僕を写真の深みへ引きずり込んでいったんです。
