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地域再生トップランナー 本家豊大さん 地域再生トップランナー 本家豊大さん

Interview — #14

「利他的であるほど、人は居場所を持てる」
限界ニュータウン再生に取り組む男が辿り着いた、幸福の法則

地域再生トップランナー 本家 豊大

Community Builder — Hatoyama

About this story

埼玉県で最も高齢化が進む鳩山町を舞台に、地域再生のトップランナーとして走り続けてきた本家豊大さん。まちづくり、スタートアップ支援、福祉、音楽、コミュニティ。多岐にわたる活動の根底には、ご自身の生い立ちから導き出された「人が孤独にならず、幸せに生きるための設計図」がありました。

本家豊大さん インタビュー01
01

障害を持つ父の背中から学んだ、
不条理への問い

本家さんの活動の根底にある独特の哲学は、どこから来ているのでしょうか。

僕の父は左手しか動かない障害を持っていました。頭はすごく良くて、囲碁のアマチュア最強クラスでしたが、当時は障害を理由にプロへの道を閉ざされたんです。幼少期からそんな不条理な環境を目の当たりにしてきたので、世の中の常識というものを常に疑うようになりました。

常識に従ったからといって、幸せになれるとは限りません。むしろ、それをひっくり返すことで新しい価値観が生まれ、それが幸せに繋がる。人間は、生きるため以外の無駄なことをするために生きていると思うんです。意味のないことに、あえて意味を見出して遊ぶ。その余裕こそが、人間の尊厳なんじゃないかな。

02

寄り道だらけのキャリアが、
すべての土台になった

サラリーマンから楽器屋、イベントプロデュース、福祉と、幅広いご経験をお持ちですね。

大学を出て、最初は名の知れた会社でサラリーマンをしていました。いい会社だったけれど、3年で退職して、指示された事を上手くこなす人生ではなく、好きな事を仕事にしていく生き方の可能性を模索し始めました。

その後は楽器屋に転職したんですが、最初は担当したデジタル楽器がまったく売れなくて。正直あの頃が人生の底辺でした。でも生活やマインドセットを切り替えて本気でやったら、ギターの部署に移ったタイミングで全店売上1位になれました。自分の才能がどこにあるかって、うまくいかない経験があってはじめてわかるんですよね。

その後は「自分が純粋に良いと思う世界観を自分で作って届けたい」という気持ちから自分でイベントプロデュースを始めて、社会福祉協議会の市民協働の相談員なども経験しながら、いまの鳩山町のまちづくりの活動へと繋がっていきました。

本家豊大さん インタビュー02
意味のないことに、あえて意味を見出して遊ぶ。その余裕こそが、人間の尊厳なんじゃないかな。
本家豊大さん インタビュー03
03

ギター一本で「拒絶」を「信頼」に変えた、
鳩山町での日々

埼玉県鳩山町の「コミュニティ・マルシェ」では、具体的にどう動かれたのですか。

鳩山町へ移住し、コミュニティ・マルシェが開館した当初は住民の反対ムードも強かったですね。行政が大きな予算を投じて拠点を整備し、町を再生しようとしていましたが、住民の方々からは「この施設は何をする場所なのか」「高齢者が使えるのか」という不安の声もありました。よそ者がよくわからないことをやっている、という空気もありましたね。

そこで僕が最初にしたのは、ギターを持って地元の居酒屋を巡ることでした。昭和歌謡が得意だったので、おじいちゃんやおばあちゃんの間に入って歌うんです。理屈で説明するより、まずは懐に飛び込んでしまう。一人暮らしの高齢者のお宅に伺って瓶の蓋を開けたりスマホの設定を手伝ったりする御用聞きの仕事も数年続けました。

そうしてようやく、コミュニティ・マルシェに行けば誰かがいる、という信頼の置ける場所に育っていったんです。知らないことが偏見を生むだけで、知り合ってしまえばいい。一人ずつ、地道に知ってもらうための行動を徹底しました。

04

住民が主役になる
「自走する仕組み」をどう作ったか

今は本家さんがいなくても場が回っているそうですが、その秘訣は。

良いスタッフや関わってくれる仲間が集まってくれたので、本当にそのことに感謝ですね。

ポイント的な事で言えば、施設を盛り上げること自体をゴールにせず、盛り上がった時にこの施設は町の中でどういう機能を備えているかという視点で考え抜きました。例えば、高齢者向けのスマホ教室を自分たちで始めて好評を得たら、それを町の公共事業にまで育て上げる。あるいは、子供たちが地域の大人からもらった寄付でお礼の手紙を書く「みらいチケット」という仕組みを作ったり。

スタッフの採用でも、利他的な人間かどうかを重要視しました。ギバーだけを集める。そういう環境では、誰かのやりたいことを「面白い、やりなよ」と応援する文化が自然に生まれるんです。

実際に主婦の方が自分の作品を販売して起業したり、80代の方々が健康食品を作って町に届けたいと起業したケースもありました。3年という時間軸の中で壁打ちを繰り返しながら、関わる人それぞれが自分なりの形を見つけていく。(本気度と実現可能性を高めるためローカル起業支援では自身の事業を形にしていく期間として3年という基準を設けています)人を呼んで売上を上げるのは通過点でしかなく、そうなった時に必要な仕掛けを一つずつシステム化していく。8年経ちましたが、今は皆さんのおかげで若い世代や地域の方々が自発的に場を動かす仕組みが出来上がりつつあります。

本家豊大さん インタビュー04
利他的であるほど、人は居場所を持てる。
本家豊大さん インタビュー05
05

積み重ねの末に気づいた、
利他性のサイクル

8年間の活動を振り返って、うまくいった理由は何だったと思いますか。

正直、最初は感覚でやっていたんです。なんでうまくいったのか、最近やっと言語化できるようになってきました。答えは「利他性」でした。

人が孤独にならないためには、利他的な目標を持つことが不可欠なんです。人間は、自分以外の誰かの利益のために動いているとき、初めて同じ目標を持つ同志に出会える。これが孤独を解消する唯一の道です。

でも、いきなり利己心を捨てるのは難しい。だから僕は、利他的な人間が集まる場を作る。そこではお互いを承認し、褒め合う文化が生まれます。すると参加者の自己承認力が高まり、自発性が生まれて、気づけば自然に利他的な行動を取れるようになっている。

「自己中心的利他」という概念がありますが、それが最も素晴らしい状態だなと思います。自分の好きなことを徹底的に極めた結果、それが周りの人を幸せにする技術になっている状態。このサイクルを丁寧に回せば、どんなに硬直した組織や地域でも活路を見出せる。そんな確信があります。

06

論理を超えた「直感」が、
行き止まりを突破させる

正解のない時代に、迷いの中にいる人たちへ伝えたいことは。

今の時代は論理思考ばかりが鍛えられすぎている気がします。でも、論理っていうのは「こうなったらこうなる」という過去の延長でしかありません。自分がなりたい自分になるためには未来からの思考が必要なので、もし今の自分に違和感があるのならもっと直感的になってやった事がない事にどんどん挑戦する必要があると思います。

自分の幸せは、自分が決めるものです。これが自分の幸せです、と断言できることがこれからの時代は必要になってくると思っています。

迷っている若い子たちに一言伝えるとしたら、現代は時代の変わり目で、まだまだ古い価値観をそのまま伝えてくる大人も多いので、もし合わないと感じたら、逃げていいんだよと伝えたいですね。日本にいる限り、死ぬことはありません。必ず通じ合える仲間はいるし、正解のない時代に、正解がないことを笑って話せる大人を見つけてほしい。そういう大人は必ずいるし、あきらめない限り人はなりたい自分に必ずたどり着けると思います。

本家豊大さん インタビュー06
本家豊大さん インタビュー07
07

誰もが自己実現できる場の創造を
これからも続けていきたい

本家さんがこれから目指すものを教えてください。

いま、次に考えている場づくりは「多世代介護付きシェアハウス」です。モデルとして神戸にはっぴーの家ろっけんという素晴らしい場があり、そこでは認知症の方も赤ん坊も外国人もごちゃ混ぜに暮らし、誰かが亡くなれば全員で送り出す。それが最高の死に方だと思っているんです。多様性のある人々が同時に存在することにより、必然的に誰しもに役割が生まれて、また、死の共有がコミュニティの絆を強くするんです。

鳩山ニュータウンではアクティブな高齢者が自分らしく活動できる場づくりは少しずつできてきているのですが、そんな方々も年齢を重ねて自分の事が自分でできなくなってしまうと、ホームなどに入居する事になり、それまで暮らしていた町の中の日常と切り離されて孤立化してしまうんです。

なのでそういった場を町の中に作る事によって町の中での暮らしが終わらない場づくりができると考えています。それが次の目標ではありますが、基本的に自分がやっていることは「誰もが安心して自己表現できる社会づくり」で、これは高齢者に限らずどんな方にも必要なものだと思っているので、「誰もが安心して自己表現できる社会づくり」に関わる事はこれからもあらゆるフィールドで取り組んでいきたいと思っています。

Message

利他的であるほど、
人は居場所を持てる

鳩山町での8年間と、これから目指す場づくりについて。

ギター一本で居酒屋を巡り、御用聞きを続け、コミュニティ・マルシェを信頼の場所に育てた本家さん。うまくいった理由を「利他性」と言語化できるようになった今、次の目標は町の中に暮らしが終わらない多世代介護付きシェアハウスです。

常識を疑い、寄り道を糧にし、利他的な人が集まる場をつくる。自己中心的利他のサイクルを回し続けることで、硬直した地域にも活路が見える——その確信は、限界ニュータウンという言葉の重さを知る鳩山町で、8年かけて積み上げてきたものでした。誰もが安心して自己表現できる社会づくりを、これからもあらゆるフィールドで続けていく。その姿勢が、本家さんの幸福の法則そのものです。

ニュータウン再生の記録は、noteで続いていく

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本家 豊大|Toyohiro Motoie

鳩山町でのまちづくりの現場から、日々の試行錯誤や気づきを発信している本家豊大さんのnote。ニュータウン再生コーディネーターとしての活動記録や、著書に関する情報もこちらから読めます。

マガジン「ニュータウン再生 奮闘記」では連載を継続中。ほかにも「面白がれる人が世界を変える」「鳩山ニュータウンプロジェクトの活動まとめ」など、地域づくりのリアルが綴られています。

ニュータウン再生コーディネーター/鳩山町コミュニティ・マルシェ(地域再生大賞 優秀賞)/Tokyo Innovation Base コミュニティマネージャー

インタビューでお伝えできなかった現場の記録や、これからのまちづくりの構想は note でも発信されています。 ぜひフォローして、本家さんの活動を追ってみてください。

本家豊大さん 本家豊大さん

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Afterword

本家さんとの対話を通じて、いちばん強く残ったのは「利他的であるほど、人は居場所を持てる」という言葉でした。障害を持つ父の背中から学んだ不条理への問い、楽器屋での底辺経験、ギター一本で鳩山町の居酒屋を巡った日々——寄り道だらけのキャリアが、すべて今のまちづくりの土台になっていると語る姿に、説得力がありました。

施設を盛り上げることをゴールにせず、スマホ教室を公共事業に育て上げ、みらいチケットを仕組み化する。売上は通過点で、必要な仕掛けを一つずつシステム化していく。その設計思想が、8年後の「本家さんがいなくても場が回る」状態につながったのだと理解しました。

正解のない時代に「逃げていい」と若者に伝える言葉、多世代介護付きシェアハウスという次の展望。論理を超えた直感と、自己中心的利他のサイクル。幸福の法則は、限界ニュータウンという過酷な舞台で、一人ひとりと向き合い続けた先に見えてきたものなのかもしれません。

筆者画像

秋田 信明 Nobuaki Akita

Wakku Inc. CEO|wakkul

SI・Web業界での28年の実務経験を経て、現在はセルフプロモーションサービス wakkul(ワックル) の企画・設計・運営を手がける。モデル・職人・料理人・エンジニアなど、あらゆる分野で技と物語を持つ人が自分らしく世界へ発信できる場づくりをテーマに、戦略と技術の両面から取り組んでいる。

Profile

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